印材・篆刻・雅印の豆知識
@青田青白石 青田石の一種。産地は中国浙江省青田縣です。 昔から、透明感のある「封門青」が青田石の最高級品とされ、 現在採掘出来る量も少なくなっているため印材よりも高価な石彫として販売されています。 蘭花青田等も珍重されています。青田青白石はグレ−ドとしては低い方ですので、 練習用としてよく使われています。仕上げをよく見せてA級品とするような広告・宣伝等も見られますが、柔らかめの石質で、篆刻初学者には最適だとされています。
A昌化石 鶏血石特に有名ですので、他の石があまり言われませんが、 実際は巴林石と非常に似ているものが嘗て大量に産出していました。 20数年前から鶏血石が取れなくなり、偽物が流行りだしたのです。 最近市場に出回っている鶏血石はほとんど巴林産です。
B巴林石 中国内蒙古自治区巴林右旗が、産地として1980年代より開発され、 印材の産地としては比較的最近開発されたことになります。 色のよいものには、寿山石や浙江の昌化石等の名前を真似た名前の物もよく有り、混同されています。
C寿山石 中国福建省が産地であり、印材の産地としては最も歴史のある地域とされています。 寿山石は、分類される品種が非常に豊富で、田黄、田黒、芙蓉凍、水晶凍、茘枝凍、杜陵坑、善伯洞
等300種類以上に及び、貴重な物になると金よりも高価なものも有り、古い文献等に、高い評価とともに、よく見られるため、よく文人墨客に観賞用等として収蔵されています。 現在、連江黄、鹿目黄などが、よく田黄として売られていますが、その価値としては全く違う物です。
D綺林石 中国青海省が産地であり、新しい坑脈。やや脆い石質で、色が落ちる場合があります。 特に有名なものではありませんが、初心者の方には、その切りやすさで、受け入れられております。 但し、そのやや粉状の性質から、線の細い作品には向きません。透き通って見えるものは凍石とされています。
E臨江石 寿山系の善伯坑の鉱脈で採れるものですが、隣の江西省に鉱脈が続いていて、 江西省との省境である甌江を臨む山脈に最も多く産出しているため、 現地では臨江石という名前で知られています。 寿山石の方があまりにも有名なので、「高級寿山石」等として売っている業者もあるようです。 石質が細かくて不純物が少ないため、切りやすい上に、小印章で線の細い作品や多字数作品を作るのにも最高です。
F賀蘭石 中国東北地方と内蒙古自治区の間辺りで産出されます。 鉱脈が賀蘭山脈に通じている為、この名が付けられたようです。 柔らかめで、脆いため、作品用には向かないが、初心者には、その切りやすさが喜ばれています。
G広東緑 古代より中国の四大名石の一つとして知られ、特に広東凍は専門家垂涎の宝とされています。 近年、取れたり、取れなかったりと、鉱脈での採掘量が大変不安定なため、定番品として扱うのは難しい情況です。 金色と真っ黒な点点がある部分が、非常に硬いので、篆刻用なら印面(字を彫る面)に点点の少ないものを選ぶのが無難とされます。
H嶺南凍 中国遼寧省大興安嶺山脈の麓で産出され、石質は賀蘭石とよく似ています。 敢えて違いを言うとすれば、賀蘭石よりも、やや粘りがあるというくらいです。
印材の四大名石: 寿山石、青田石、昌化石、広東緑は、何れも高級品とされ、歴史上、現在に至るまで、貴重品として、人々に重用されてきました。 昌化石では、最も有名なのが鶏血石です。
印材の選び方:人によって違います。初心者の方には、柔らかめで切りやすいものが勧められます。 ある程度、力と技術が付いてきたら、不純物の多いものを彫るのも避けて通れない道です。 所謂「材料に因って彫りを施す」「方寸の間に功力が見られる」はその通りです。 実際にはどういう風格の作品を彫るかによって選び方も違いますし、また、篆刻家の好みによる印材選びは、自らの風格形成に大きな影響をあたえるでしょう。
中国の篆刻教育: 中国では、篆刻を学ぶ者は、最初に石磨きから習います。原石を必要な大きさに切り、磨き、彫りを施し、印面を仕上げてから、最後に篆刻の勉強に入ります。
雅印選び: 印鑑は信用の証であり、嘗ては権力の象徴でもありましたので、本来は硬い材料を使っていました。中国では皇帝の印は玉璽、王は金印、大臣以下は石印などを使っていました。 作品に雅印を使うのは○○が書いた作品である、という意味だけではありません。 芸術家にとっては「補白」と言って作品作りの総仕上げです。 作品の空白部分に雅印を使うことによって作品が生き生きとしてきますので、作者にとって雅印をどこに捺すかが難しい問題です。 また、雅印の大きさと書体、用紙の大きさ、作品の大きさ、作品の内容及び風格などによって、それぞれ違うものを選ぶのが普通です。雅印は芸術家にとっての財産ですので、雅印が多すぎる、ということはないでしょう。
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